福岡伸一「世界は分けても分からない」
メモ.
- 作者: 福岡伸一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/07/17
- メディア: 新書
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事象を観察して理解しようとするときに,巨視的な視点から全体を理解しながらアプローチする方法と,部分に注目しながら理解していく方法がある.前者で見えるものと後者でみえるものは~みたいな話に関連するエピソードが書かれていた.
世界は分けないことにはわからない.しかし,分けてもほんとうにわかったことにはならない.
先生がエピソードごとにそういう異なる視点で物事を見る話を,授業中の休憩時間に先生が学生にする小話のトーンで書かれている本だなぁと思った.
- 視線の話
人の視線をふと感じとることができるのはなぜか.カメラのフラッシュを焚いたときにおきる赤い目の現象のように,人の目は入ってきた光を少し反射する.その光かも?
- 顕微鏡
倍率をあげてみえる範囲を絞ると,面積あたりの解像度はあがるけれども,入ってくる光の量が少なくなる(微視的).暗くなってしまう.細かい部分に注目しすぎると,その前に全体で見ていた時(巨視的)に見えていたものが見えなくなったりもする.
乳酸に似ているため,代謝反応の連鎖の中に入り込んで,代謝を阻害する.微生物の増殖が阻害されることで,食品の腐敗を防ぐことができる.
各種物質が人体に与える影響についての,実験環境(細胞単体に対しての.微視的)での評価の上で添加物は安全性を担保されているけれども,実環境で人間が暮らしている境界線のない世界で長期的に見た場合,実際のところどうなるのかはわからない(巨視的).便利さとリスクわかってね.
初期胚は各細胞が相互にコミュニケーションしながら分化していく.全体概要(地図)みたいなものに沿って分化していくわけではなくて,隣接細胞で相互コミュニケーションをとりながら方向性が決まっていく.(微視的)
ES細胞は未分化の細胞.細胞たちがコミュニケーションして分化していく段階に適切にES細胞を入れてやると,各種臓器に分化する.けど初期胚以外にES細胞をぶち込むと増殖が止まらずガン化する.(話がきけない子なので)ガンとES細胞は紙一重.
ところでES細胞ってエントリーシートみたいで,新卒の学生がさまざまなプロフェッショナルに分化していくみたいな妄想しちゃう.
- 空見・空目
目の細胞の側方抑制.人工物を人間的に自然にかんじるための機能.
- マークスペクターの研究不正
ガン化の発生経路に関する研究に際し起きた大スキャンダル研究不正.昔研究倫理の講習で受けた気がするけど,小保方事件のほうが印象的すぎて覚えてなかった.
どこにもさらっと不正をしちゃう人はいるんだなぁというのと,現在の研究は性善説を基にして研究がおこなわれてるけど,それが正しいのかどうか...不正を証明するために必要になる労力がでかすぎるから,現実的には性善説を信じるしかないんだろうけど.
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