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「生物からみた世界」感想

「生物からみた世界」

勉強したことを備忘録用にメモするという点でこのブログを作りましたが,直近で書くことがないので,読んだ本で印象に残ったことも記録しようと思います.

生物から見た世界 (岩波文庫)

生物から見た世界 (岩波文庫)

先日参加した学会で,中島秀之先生のご講演がありました.そのお話の中でこの本について言及されていて,気になったので大学の図書館で借りて読みました.

以下は私のつたない頭で理解できた中島先生のご講演の内容です.

データによる「学習」には精度に限界があり,「(知りたい事象に基づいて)予期」するような高次推論をする研究が今後必要である.指向性を持って環境を認識することが必要である. (略) 生物が認識している環境は,その生物にとっての環境であり,環境と生物との相互作用によって知能が出来上がっている

というようなお話があり,「生物と環境との相互作用による知能」の部分でこの本の引用がありました.

この本は100年以上前に書かれた本で,今では存在が完全に否定されているエーテル波についての記述もあります.しかし,話題としては全く古く感じませんでした. 著者は,それぞれの生物が認識している環境を「環世界」と呼び,この世界には生物ごとに異なる環世界が存在していると言います.客観的な環境というものはなくて,すべての環境は主観的なものであり,人間が認識する部屋と,ハエが認識する部屋と,犬が認識する部屋では,同じ部屋であっても,異なる環境であるといえます.各生物の環世界において,生物は,その生物にとって必要最低限の条件を用いて行動をとっています(したがってご認識に基づく行動も起こし得ます).

ロボットにも同じことが言えて,人間と同じような認識の仕方ではなく,ロボットの身体・行動に最適な環境の認識の仕方があって,行動ごとに,人間とは異なる行動のトリガーを持っている必要があるのではないかというようなことが言えるかなと思います.

面白かったです.とても薄いので,暇なときにちょくちょく読むのでもすぐに読み終わると思います.